どんなに外で元気に遊べてもどんなにスポーツができても、勉強もそこそこできてほしいし、学校の成績も良くあってほしいと思うのが親の本音だろう。
バディでは、勉強と海遊びをセットにしたキャンプ(合宿)を3年前からやっている。
先生は、数学講師のいっちゃんとその弟子のヤス。今年はヤスが来れなかったので、代わりにみんなの先輩のユウタとジュンノスケとトモヤが参加してくれた。ユウタもジュンノスケも理科、英語、算数、社会、国語と守備範囲が広く面倒見がいい。今回、即席で振り子や水溶液の実験もやり、予想以上の結果にスタッフも子ども達もやり切った感を共有することができた。トモヤは海と食事面でみんなをサポートしてくれた。そんな彼らの存在は、とても頼もしかった。
イッちゃんは、子ども達に、問題集に出ている問題を解くではなく、まだ人類が誰も解いたことのないような問題を解くこと、あるいはそれが解けなくてもそれにチャレンジすることがどんなに素晴らしく、そこにこそ生きている意味があるということを、算数を通して語りかけている。これはいっちゃんの師匠である秋山仁先生からいっちゃん自身が伝授されたことだ。
そんないっちゃんが、この合宿で、子供達に何を教えているのか。いっちゃんが、子ども達によく言っていることをメモしてみた。
・字をきれいに書きなさい。(自分の書いた字がわからないとミスをおかす)
・雰囲気でやるな。
・笑ってごまかすな。
・なぜそうなるのかを自分で説明してみよう。
・よく考えよう。
・あてずっぽうで答えを言わない。
・よく考えてから、答えを口に出すように。
・(計算の)スピードも大事。
・集中しろ。
・繰り上げは書かない。
・問題をよく読め。
・勝手なことはしない(問題に書いていないことを勝手にやるとデタラメになる)
・図で理解する。
これらは問題が解けずにつまづいてしまう子ども達に共通してみられる悪い癖と言える。この悪い癖をなおすには、訓練する以外に方法はないと思う。特に勉強に対する苦手意識が強い子は、この基本的訓練をしっかりやることで、勉強の力が飛躍的に伸びるだろうし、後は反復練習で、さらに力がつくことを確信した。“やる気スイッチ”があるとするならば、それは誰かが押したり、勝手に入るのではなく、こうした訓練をきっちりすることなんだと思う。
ごまかしがきかないという点では、アウトドアの世界も同じである。算数でケガをすることはないが、自然の中で、集中力を切らしたり、大事なところで判断を誤ったりミスをすれば命を落とすことだってある。ただみんなは、自然の中で遊んだり、活動している時は、夢中になって楽しんでいるから、意識して集中しなくても、知らない間に集中しているし、最大限の注意を払っているのである。
それは、みんな、これまでに自然を身体で感じること集中へ集中する訓練を、知らず知らずにやってきたからであり、自然を深く理解し、身体が勝手に自然に反応することができるようになったのだと言える。これはものすごい能力で、それをやってきた人とやってこなかった人の差が歴然だろう。
逆に言えば、こうした能力は勉強でも役立つということだ。
ただ、訓練のやり方がちょっと違って、先に挙げた悪い癖をなくす努力を訓練として繰り返さなければならない。
そうすることで、アウトドアでも、勉強でも、物事の本質を見抜く力がついてくるのではないかと思っている。つまり、勉強とアウトドアは両立できる可能性があり、突き詰めれば相乗効果も生まれると考えられるのである。
現代版の「よく遊び、よく学べ」、あるいはアウトドアと勉強の文武両道は、理想ではなく、現実であることを証明するのは、諸君たちだ!