■参加者 8名
■スタッフ:スマッシュ、チアキング、チバチャン、えんどう豆
■行程:
9月8日(1日目)
8:30 藤沢駅集合・移動
10:00 御殿場駅到着・移動
12:00 登山口到着・昼食・パッキング
13:30 出発
14:30 ビバーク地到着・タープ設置、まき集め、焚き火準備
16:00 焚き火開始・夕食準備
18:00 夕食
9月9日(2日目)
7:00 朝食
9:00 二つ塚(双子山)登山開始
11:00 山頂到着
14:00 ビバーク地到着・昼食・片付け
15:00 出発
16:00 御殿場駅出発
18:00 藤沢駅解散
今回一番大変だったことは、団体装備、特に水を一人4ℓ以上バックパックに入れて運んだこと。歩く距離は約40分と長くはないが、これだけ重いものを背負って山を登るのはかなりキツイ。でもその水がなければ2日間水分も取れなければご飯も食べれない。自分たちのために運ぶのだから文句は言えない。みんなにこの水の重さと水の大切さを“実感”してほしかった。
人間は水がなければ生きていけない。通常の生活でも1日最低2ℓは飲料として必要。その他手洗いやお風呂など一般的には一日4ℓ必要と言われている。家なら蛇口をひねれば簡単にキレイな水が出てくるが、山の中ではそうはいかない。ましてや水のない場所に行けば、どんなに重たくても自分の手で運ぶしかない。生きるために。
このことは、災害時等、ライフラインが完全に途絶えたときに全く同じ状況になる。
重たい思いをしてやっと運んだ水を無駄に使う人はいない。水がない時は、例えば食器は、食べ残しなくキレイに食べてからトイレットペーパーで拭き取ると水を使わずに済む。昔は、食べ終わったら器に適量の湯を注ぎ、そのお湯で器をすすぎながら、最後にその湯を飲み干してから水分だけをトイレットペーパー拭き取るのがキャンプでの常識で、それができないとよく叱られたものだ。
もう一つ、今回子供たちにやらせたかたったことは、火おこし。しかも森の中にある自然の木だけを使って。自然の木は必ずしも乾燥しておらず、上手く燃やすにはテクニックがいる。火は新聞紙など火を点火したら、勢いあるうちに細い枝、中くらいの枝、太い枝と順番に火を大きく育てていかなければならない。大切なのはその準備と段取り。そして点火してからは上手く空気を入れて調整することだ。ちゃんとやれば雨の中でも木を燃やせる。そこまで難しい挑戦じゃなくても、焚き火の仕方だけはマスターしてほしかった。
まず、まき集め。子供たちは黙々とたっぷり木を集めてきた。そしていざ、自分たちで焚き火に挑戦。新聞紙の量は限られていたので、近くに落ちている白樺の革も代用。
新聞紙や白樺に着火し一旦は炎が燃え上がるが、木に燃え移るまで至らない。あれやこれや1時間程試行錯誤を繰り返し、周囲は真っ暗になり始めた。火がつかなければご飯も食べられない。焦れば焦るほど上手くいかない。とうとう子供たちは、降参をした。
これまでバディの活動の中で火起こしは何度かやってきたし、やり方を説明もした。でも話は右から入って左に抜けていた。
今回は、スマッシュの説明を真剣に聞いていた。
そこまで、焚き火と向き合わせたかった。次の日、再び焚き火をするチャンスが訪れた。子供たちはリベンジに燃えた。サトシを火おこし番長に任命し、リベンジのチャンスを与えた。今度はみんな、木を集めるもの、燃えやすい太さに切るもの、白樺の革を探しに行くものにそれぞれ分かれて準備に励んだ。点火してからもサトシが火を育て焚き火に成功。子供達はとても喜んだ。自分だけでやったという自信を手に入れた。
次がうまくいくかわからないけど、やり方は身体で覚えたはずだ。後は何度も繰り返せばそのうちマスターできる。
ホンモノを“実感”し、何回も繰り返す“反復性”といつでもチャンスがある“継続性”、そしてステップバイステップの“漸進性”がアウトドアの技術をマスターするのに大切である。アウトドアの技術は実用性が高いだけに、生きる力の形成に大きな自信を与える。だからこそ、の部分を大切に、そして丁寧に、できる限り時間をかけて子供たちと向かい会いたいと考えている。
二つ塚から見る富士山は、今にも頂上に手が届きそうなくらい近くに見える。来年は、ぜひ高学年を山頂まで連れて行きたい!
また新たな目標が生まれた。
今回の参加者は小学生が20人、中学生が2人。小学生はほとんどが3年生で、1・2年生が5人、6年生が1人だった。
小学生の目玉は、「二・三・四体験」。2時に起きて、3時に朝食、4時出発という登山スタイルを体験すること。目指すは武尊山の横断。コースは宝台樹スキー場から登って坤六峠の手前に降りるコース。
登山ガイドには、「武尊山荘から名倉ノオキまで2時間10分」「名倉ノオキから手小屋沢小屋まで30分、手小屋沢避難小屋から山頂まで2時間と書かれている。単純計算すればあわせて4時間40分、4時に出発できれば山頂到着は8時40分、下りは少しスピードもあがり、余裕をみて10時間あれば全行程が終わると読んだ。
ところが・・・実際にかかった時間は13時間、歩いた総距離13kmだった。
実際の行程
2:50 起床
3:00 朝食
4:00 小屋出発
4:30 登山口出発
6:00 名倉ノオキ手前(標高1400m)
7:10 名倉ノオキ(標高1700m)
8:00 手小屋沢避難小屋分岐点(1680m)
9:00 最初の鎖場(1900m)
11:30 山頂
12:10 出発
14:30 鎖場出発
15:00 避難小屋上尾根(セビオス岳・1870m)
15:30 武尊避難小屋出発
16:50 武尊田代
17:15 駐車場着
登りは、名倉ノオキまで岩場が濡れていて足場が悪かった。鎖場も時間がかかった。この時点で既に予定より2時間遅れていたが、子供たちが元気だったこと、天候が安定していたこと、降りは登りよりもスピードアップできる、その先何かあってもバックアップ(①来た道を下山する、②手小屋沢避難小屋でビバークする、③武尊避難小屋でビバークする、④ゴールまで行く)がある、という理由から続行を決めた。本音は今来た道を戻るといったらみんな嫌がるだろうなあと思ったのが正直な気持ちだった。それくらい足場が悪かった。
鎖場を過ぎてから頂上までは歩きやすく、景色もよく、子供たちの元気も復活した。遅れた時間を取り戻そうと頂上での休憩も短めにして、先を急いだが、下りの鎖場の岩が滑り、時間を短縮するどころか、さらに時間がかかった。
だんだんタイムリミットが近づいてくる。ペースを上げたかったが、鎖場から武尊避難小屋までの足場が悪くなかなか前に進まない。時計とにらめっこしながら、3時を過ぎた頃から避難小屋でのビバークを本気で考え始めた。ビバークは可能だが、水が足りなかったのでキャンプ場まで誰かが取りにいかなければ・・・とか考えた。
子供達の疲労もピークだった。3時30分、やっと避難小屋に到着。ここからゴールまでは約3km、道も歩きやすく高低差もないので、頑張れば1~2時間で行ける。思い切って続行を決めた。子供たちに状況を説明して、はじめて「ガンバレ」という言葉を使って励ました。
今回、子供たちに山登りは頑張るなと教えた。頑張って無理をしたら最後まで持たない、エネルギーを温存しながら歩くようにと。子供の体力がどこまで持つか不安で仕方なかった。結果、子供の体力は無限大だった。但し、足場が悪いことと急斜面は別。時間や距離には耐えられても、足場の悪さと急斜面は子供に向かないことを再確認した。
最後の力を振り絞ってゴールに到着。疲労感と安心感と達成感が混同したが、冷たい沢の水で全てが回復した。13時間、13km無事全員が怪我もなく下山できたことに肩をなでおろした。
我々は記録を求めていたわけではなく達成感と自信をつけさせたかったのだが、13時間は低学年の行動時間の限度を完全に超えている。
”二三四”の体験は良かったと思う。登山の行動時間に関しては、今後低学年は10時間以内、高学年は12時間以内、足場の悪いコースは選ばないことを徹底したい。最後まで”ガンバらない”登山を心がけたい。
全体を通して、今回良かったと思うことが2つある。
一つは、子供達が荷物整理をできるようになったこと。以前はテントを撤収するギリギリまでテントの中は荷物でグチャグチャだったが、今回は朝起きると自分の荷物を全部バックパックの中に全部しまいこみ、テントの中がスッキリ! どうしてできるようになったかは不明だが、どのテントも荷物が整理されてスッキリしていたのに驚いた。パッキングの仕方がまだ甘いが、大きな進歩で褒めてあげたい。
もう一つは、誰かが苦しんでいるときやツライ思いをしている時に、「○○頑張れえ~」「○○大丈夫?」と励ましの言葉が自然に出るようになったこと。4月のオリエンテーションの時に話した「天使の言葉」と「NGワード」のことを覚えていたのか・・・登山中はみんな苦しい。こうした実感が、相手の苦しさや辛さをリアルに感じることができるのだろう。また活動中、色んな場面でお互いの得手不得手を知る。相手を励ます場面がたくさんあるから、何も考えずに自然にそういう言葉が出てくるのだと思う。これはとても嬉しいことで、バディ全体がそういう空気に包まれて欲しいと思う。
加えて言えば、料理や水汲み、テント設営や片付け、みんな何でもよく手伝う。だからこそ楽しいキャンプが実現していることを言葉で説明するのではなく、実感してくれているとうれしい。
最後に、サマーキャンプのねらいを再確認しておこう。
1.生命維持のために必要な「食べること」「寝ること」「出す(排便)こと」を、どんな環境でも自分一人でできるようになること。
2.さまざまなアウトドア・アクティビティを高いチャレンジレベルで楽しみ、喜びを享受できるように、自然や身体に関する感覚を鍛え、技術的、体力的な身体的コンディニングを整えていくことの重要性。
3.仲間を大切にするためにコミュニケーションを鍛えること。
一回の経験でこうした力を形成することは難しいが、自分の力で、汗をかいて実感しながら、失敗は試行錯誤を繰り返し、何度も何度も反復して挑戦する機会を自らに課していくことで、自然と向き合う姿勢や態度が形成されていくと考えている。
だからバディでは、大人があれこれ言わないし、手も出さない。その代わり危険がないかを監視し、時間が許す限り最後まで見守るし、そして何度でも繰り返しチャレンジできるようにチャンスをたくさん用意しているんだよ!
今は社員教育の一環で厳しい登山体験が人気という。大人になってから辛い思いをしながら“2泊3日”で会社生活の厳しさを教わるんじゃなくて、みんなは、同じことを今から楽しみながらステップバイステップで力をつけていく。アウトドアの活動は全てに“楽しい要素”があるんだから、楽しまなきゃ損だし、楽しくなきゃそんなの嘘だよ!
みんなが2時に起きて13時間山歩きをしたこと、今回のキャンプで経験したことは、絶対に消えない。これから生きていくのに大きな力になるはずです。その力をもっともっと積み重ねていこう!
マキも割り箸も新聞紙もたっぷり用意して、なんと贅沢な時間だろう。
オキ火をつくって、最後にマシュマロを焼いて食べるまで、自分だけの力で焚き火をすることが今日の課題。
まず、自分だけの焚き火の場所を決め、地面を少し堀りその周りに石や木を並べてかまどをつくる。
割り箸と太めのまきとその中間のまきを準備し、かまどの中にまきをセットする。
新聞紙が勢いよく燃え、その勢いがあるうちに割り箸が燃え、なーんだ簡単だと油断をすると、火はみるみる消えてゆく。
なんどやっても火は消える。
そんな中、ヒロトとヒナタ、ミノルの最年少チームが誰よりも火をつけた。
上級生たちは悔しかったはずだ。
焦れば焦るほど火はうまくつかない。
シメシメ・・・通常は(時間がなかったり、しびれを切らすと)ここで、大人が“どれどれこうやってやるんだよ”と手を出してしまう。
でも今日は、時間も材料もたっぷりある。
何度失敗しても、手は出さないし、口も最低限しか出さない。
子供たちは、しかたなく焚き火と向き合う。
ちょうど良い太さの木を選んだり、木を並び替えたり、空気のとおり道を考えたり、たくさん新聞紙と割り箸を入れたり・・・だんだん大胆になっていく。
いいぞ。
みんなの焚き火がオキ火になった頃、ちょうどあたりも真っ暗になっていた。自分で作った焚き火で食べるマシュマロの味は格別である。
その夜、忘れないうちに、焚き火のコツをノートに書かせた。
夕食後、温泉に入った後、薪ストーブでピザを焼いた。夕食を食べて間もないのに、みんなものすごい勢いでピザに群がった。
次の日は、みんなが大好きな上野原高原に続くブナの森へと出かけた。
紅葉には少し早かったが、キレイで気持ちいい。
日本の環境問題を考えるとき、今後将来益々里山の存在が重要になると思われるが、その里山を理解している若者や子供たちがどれくらいいるだろうか。
理解するとは、見たり、聞いたりするだけではダメで、見て、聞いて、実際にやってみてはじめて“わかる”ものである。
だから、今のうちに子供たちを森につれていくことは、彼らが里山や自然を理解するのに大切なことである。特にブナやナラの落葉広葉樹の森だ。そこには豊かな生態系があり、色んな動植物が共生する痕跡を見ることができる。
この日も子供たちはたくさんの動物の“うんち”を見つけた。“うんち”は生態系の始まりだ。
キノコ採りのおじいさんが鳴らす鈴の音が遠くから聞こえれば、この森の中に本当にクマがいることを知り、子どもたちの創造力はどんどん膨らむ。
この森の土は柔らかい腐葉土だ。その上傾斜がちょうどよく、くねくね曲がっている。だから降る時は、子供なら誰でも走りたくなる道だ。みんな競って走り出した。
ここは自分が小学生の頃からよく来た場所だ。僕も小さい頃はこの道よく駆け下りた。こんなに自分は足が速いのかと勘違いするほどスピードが出る。まるでエスカレーターにでも乗っているかのように、全く息も上がらずに気持ちよく走れる。そのおかげで、山に対する自信や走りの自信がついたのかもしれない。
今、その同じ姿を目の前の子供達に見ることができるのは、感慨深い。
いつまでもこうした森が残っていてほしいし、いつでも子供たちを連れて行きたい。